2018-06-11

カルチャーをアダルトに話してみよう ”承“ 前編


小説家朝井リョウ先生が、決して対談を受けたがらない理由があるそうです。
それは、自分の発した一言一句を、ライターに殺されてしまうから。だそうです。

物事には、美しさより勢いを重視したい場面があります。
今回のメインテーマとしたかった内容が、この前後編で綴られています。
したがって、ほぼ会話に修正を入れておりません。
特に私は会話のライブ感を大切にしたい傾向があります。
巷の読み物は、どうしてもライターが読みやすく編集してしまっているので、違和感を感じるのです。
なので、かなり、かなり読みにくいかもしれませんが、どうぞご自身のペースで、読了していただけますと幸いです。
名作は、こうして出来上がる。の巻…。

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—— 第二部は、先ほども出てきましたAV監督「カンパニー松尾」さん。彼の代表作となった『テレクラキャノンボール』について、その隠されたレジェンド話をぜひ世間に聞いて頂きたいなと思います。

シブヤ えーー(笑)。

—— 全部カンパニー松尾さんの手柄になってるじゃないかって思うのですが(笑)。

シブヤ そうなのか! あいつの手柄になってるのか(笑)。

—— テレキャノ(テレクラキャノンボールの略称)はシブメグさんが立ち上がらなかったら、絶対に世に出てなかったじゃないですか。

シブヤ ありがとうございます(笑)。

—— 元々『テレクラキャノンボール』を撮るっていうことから聞かされてたの?

シブヤ 当時にタートル今田と仲が良くて、うちの店でも本当によくご飯を食べに来てくれてて、色んな話をしてる中で、「シブメグさん、いよいよテレキャノやるよ」って言われて「おーマジか、応援してるよ」と。撮る段階で今ちゃん(タートル今田さんの愛称)に、「まだ内緒なんだけど、もしかしたら劇場版で、映画館で上映できるかもしれない。」って聞いて、「おー!いいねいいね!」とは会話してました。

—— 作る前からもうそこまでの予定だったんですか?

シブヤ そうなんですよ、でも正直私は難しいだろうなと思ってたんで、話半分に聞いてたんですよ。でもそうしたら実際劇場でやるんだってことになって、びっくり。私は昔から裏方でバンドの宣伝したり、お芝居でもなんでもやってきたから、ある程度のノウハウはあるから、ビラを配るとか前売り券売るとか手売りするとかって、もしも、どうしていいか分からないときは言ってねって話はしてたんです。彼からも「そこはメグさんに甘えるよ」っていう話はしてました。それが撮影が8月だったんですけど、その話をしたのが8月の終わり頃で、全然それからテレキャノの劇場版ができたっていう話は聞こえてこなかったので、やっぱりポシャったのかなって思ったんですよ。そうしたら年明けて1月の終わりぐらいに今ちゃんからポスターと…。

—— 2014年の1月?!

 

 

シブヤ そうです、テレクラキャノンボールを上映した2014年の1月の終わりぐらいに今ちゃんから、「前売りとチラシができたよ。」って言われて「はぁ?そうなんだー。」って。それって初日はいつなのって聞いたら2月の15日っていわれて、2週間あるかないかじゃんっていったら、「メグさんよお、2週間あるかないかなんだけど、実はまだ本編出来てない。」って聞いて、「え?」って(笑)。だから試写会もできないし、しかも今ちゃんが言うには、松尾さんが全部編集もやってて、今どんな感じで出来てるのかって、誰も怖くて聞けないから、どういう映画になってるのかも俺たちには分からないって言われて…。

雑誌の人にもパブリシティにのせてくれとも言えないし、試写会もできないし、だから前売り券を刷ったところで誰にどう売っていいのか分からないって言われて。とにかくチラシとポスターはできたけど、皆忙しいし松尾さんも編集で一生懸命だし、他の人もAVを撮らなきゃいけないから、どうしたらいいか分からないって言ってて、とにかくポスターと前売りとチラシをもって一回《浮かびなさい》っていったんです。そこで話聞いてあげるっていって。

そのときはわりとウチの店が連日満席だったんですよ、今ちゃんがさすがに気を使って前売り券10枚しか持ってこなかったんですけど、私がその場でチラシを配って前売り券を皆に「一枚千円だって、買うよね?」って売りつけて(笑)。どういう話なのかは私も正直テレクラキャノンボールっていうシリーズは知ってるけど、今回のテレキャノがどういうものかっていうのは私にも分からない、だけど私はカンパニー松尾のファンになって四半世紀だと、16歳のときに初めて観てそれからずっとカンパニー松尾を好きなんですよ、もう25年。私が愛し続けてる男が一念発起して劇場版やるぜってやった映画なんだから悪いわけがないって言って、でもし観てつまらなかったら私がお金を返すから、だから今ここで千円で買ってって皆に買わせて。

 

—— そこにいた人に(笑)。

シブヤ そう(笑)。でもそのときチケット買ってくれたお客様が、ほかの常連さんに話してくれて、皆が「なにそれ?」ってなって「なんで私に売らないのよ!」って文句言ってくれて。じゃあじゃあ…って。そこで「今ちゃん、ハマジム中の前売り券私にちょうだい!全部売ってあげる!」って。「マジすか!」って話になって(笑)。で、ところで映画は上手くできそうなの、編集はどこまで進んだのって訊いても全然分からないと。でもその時点で2月の頭だったんですよね。でもまぁとりあえずチラシも前売りも私がやるよって言って、全部持ってこさせて。

 

—— その数はどのくらい?

シブヤ 前売り券は100枚でしたね、ポスターは20枚ぐらいあったのかな。チラシはそんなに刷ってなかったんですよね、そのときはまだ。70枚ぐらいかな。それを配って回って、友達の飲み屋とかに。あとあの作品はバイクで走るのがメインだったりするんで友達がやってるハーレー屋さんに行って「これ置いてもらっていい?」って頼んでチラシ置いてもらったりしてっていうのを、ずっとやってて。で、2月のあたまに宇川直宏さんがやってるDOMMUNEってネットの番組があるんですけど、それにV&R安達(かおる)さんが出演したとき、そこにカンパニー松尾とバクシーシ山下がゲストで出たんですね。そのときにまた前売りとかポスターがあるなら、また配ったり貼ったりするからって取りに行ったんです。今ちゃんにそのとき「ところで映画は完成させてるのか?」って訊いたら「いや、それが…」ってなってあの野郎…!と思って(笑)。

 

—— それがいつ?

シブヤ それが2月の10日ぐらいですね。パニ尾さん(カンパニー松尾さんの愛称)は、私が四半世紀愛し続けてるAV監督だって色んなところでいってるって知ってるから、「あ、シブメグちゃ〜ん」みたいな感じで「俺のために前売りありがとう」ってスカシた感じできたから「パニ尾さん、ちょっと裏いいっすか?」って言って(笑)。

DOMMUNEの会場のお客様が入る細い階段があるんですけど、そこに呼び出して「まだ出来てないってどういうことなんすか? 私映画の裏方やってたんで知ってますけど、映画1本売るってどれぐらい時間かかるか分かってます?」って凄い説教して、「試写会打てないとか本当ありえないんですけど!」って言ったら、「スイマセン…」って(笑)。

「いやあの素材が14テラあってね。」とか「知らねえよそんなの!」って、「終わったのって8月だよね、今何年何月?」って大説教をして(笑)。とりあえず初日は2月の15日って書いてあるし、私はその時点で前売りを20枚売ってたんで、「私の客は確実に来るから、その人たちに恥をかかせるようなものを出したら承知しないから、頼むよボンクラ!」ってその後ずっとボンクラって言ってて(笑)。

ポスターとかあるだけ回収して、その時点で80枚全部もらったんですよ。私が100枚売ってやるって実際に売って、でも正直本編を観てないから、あんだけ言ったけどクソみたいな作品だったらどうしようって思ったんですよ。返金破産とかしたら嫌だなと思って(笑)。ドキドキしながら残り5日間で、諸々のチケットも売って、初日ユーロスペースでやったんですけど、お客様には、当日私は絶対いるから怖がらずに来てくれと、女の子も怖いだろうけど私がいるからおいでって言いました。

 

 

—— アダルトを観たことがない人もずいぶん来たんですね。

シブヤ 逆にいえば本当にそのときに買ってくれた子たちって、「アダルトビデオってよく分からないけどメグさんがよく喋ってるドキュメンタリーAVの人なんですよね?」ってところからはじまって、そこでどんなドキュメンタリーAVを撮ってるかっていう説明をしたときに、凄い興味を持ってくれた人たちなんです。「AVの入り口として行きたい」って言ってくれて、でもこれがクソみたいにつまんなかったらどうしようって私もドキドキしてましたからね、初日。観てないんで。

—— それまで観てなかったんですね。

シブヤ 観てない観てない。だってパニ尾が前日の朝に白完がやっとできて、そこからユーロの受付に行って「バレンタインに間に合ったね」って言ったんだって。殴るぞって思ったもん(笑)。で「これでいけるでしょう」ってなって2月15日の夜になって限定6日間レイトショーだったのかな、2時間もので。そこではじめて観たらもの凄く面白くって、痛快だし最高だし、これだっていう。これを観たときにまずこれがレイトショーで6日間だけだと、しかも雑誌にもどこにも載せられなかった、試写会も打てなかった。で見渡したときに映画関係者って感じの人は来てなかったんですよね。AVの関係者は凄く多かったけど、ただ映画として言い方が悪いかもしれないけど影響力のある人が来てないなって感じたんですよ。ってことはどういうことかっていうと、どこにも噂になってないってことだと。これはしょうがない私がやろうってなって2月15日からほぼ一ヶ月店を休んで大人の遠足月間にして、皆さん渋谷で会おうっていったんですよね(笑)。それで本当に普段私自分のお店の営業とか全然しないんですけど、そのときだけは色んな常連さんにLINEだのメールだのなんでもして、テレキャノ見てくれって、浮かぶじゃなくて渋谷で集合っていって(笑)。

 

—— 私も渋谷の上映から知りましたもん、同じ業界にいても知らなかった。

シブヤ 本当にそうだったんですよ。

 

—— それも渋谷でやってるらしいっていう噂だけ。

シブヤ そう、でも結局どこでどんな風にすればいいのかっていうのがみんな分かってなくて、あの6日間で一日平均5〜10人は必ず連れて、会社員の人は前売りとか買えないから早めに行って、私が買ったりして待ってるねって。で、その間にテレクラキャノンボールが6日間だけではもったいないと、札止め連チャンで通路に座布団敷いてっていうぐらいになったんで、これは追加上映がくるぞと思って、次はその追加上映を自分の目標にしようと思って、観に来てくれたみんなに頼むから噂にしてくれと、ツイッターでもなんでもいいからもの凄いものを観たっていう気持ちを素直に書いてくれないかって。

ちゃんと『劇場版テレクラキャノンボール2013』っていうのをちゃんと入れてって頭を下げてお願いしたら、みんな快くやってくれて、それが凄い噂になってどんどん人も増えて「観れない」って人まで出てきたら追加上映が決まって。で、その次の目標はどうしようかなって思ったときに、渋谷のユーロスペースって場所を考えたら、これをロングランにするのはちょっとむずかしいだろうと思ったんですよね。だったらどこかロングランでやってくれそうなところが引っかかってくれて、うちでやりませんかって話が来るようにしたいなってまた目標を立てて強化月間にして、「本当に申し訳ないですね、浮かぶという場所はちゃんとありますが私は今渋谷にいます」っていう感じでずっとやり続けて。カンパニー松尾はカレー好きで有名なんで「今日も大人の遠足です、その前にカレー食べます」って毎日カレー食べたんですよ、色んなところで。どんどん仕掛けていったらポレポレ東中野で上映しましょうって言ってくれて。

 

 

—— それであそこになったんだ。

シブヤ でも作品自体は力のある作品なので。

—— だけどどれだけ力のある作品でも宣伝する人がいなければ…。

シブヤ ですよね(笑)。あれはエロなので求めてない人にとってはエロは暴力になるから、あんまりやたらと薦めることはできないって思ったんですよ。でも私のお店「浮かぶ」を面白がってくれる人だったらきっとシンパシーを感じてくれるっていう確信があって、そこからどんどん色んな人に繋がっていく確信もあったんで、これはやるしかないでしょと。家賃が払えないとか自分の収入が無くなるっていうのはもうお金の問題だからそうなって困ったら何してもいいんだから、バイトするなりして金で解決できるならそれでいいやって思って。でもこの映画が埋もれるのは本当に良くないと思ってやったんですよね。そうしたらポレポレ東中野でも決まったし、そこでも満員が続いたし、嬉しかったのはテアトル新宿の企画で3日間特集上映をやるっていうのがあって、そこで次の目標は3日間を完璧に埋めることだなと思って「デカいスクリーンで観たくありませんか!」って言ったらお客様も観たい!って言ってくれて、自分たちでチケット取るよって言ってくれて気がついたら3日間の上映で浮かぶのお客様で80人くらい来てくれて。

 

—— そのあたりからチケット取れないって噂になったんです。

シブヤ ありがたいですよね、広めてくれる人がちゃんといたっていうのがありがたいですよね。そんなことをずっとやってましたね(笑)。

 

—— 凄いところまでいって、8時間ものがその後に出たんでしたっけ?

シブヤ 完全版10時間が出て、そのときに私も一ヶ月間も店を閉めて、こんなことしたっていう区切りでやりたいことがあるってパニ尾に頼んで、うちの店で「俺のこだわりを聞け」っていうユースト番組があって、不定期でその人のこだわりについて延々と語ってもらうっていう番組をやってるんですけど、それのスピンオフとして、テレクラキャノンボール10時間マラソンをやろうってことになったんです。映像はさすがに映せないから、タイムコードを移して向こう側で観てる皆さんは、そこに合わせてもらって一緒に観て、カンパニー松尾とアキヒトコメンタリーですよね。他の出演してくれたAV監督にも来てもらうようにして「あのときはこうだった」とか「実はこのときこうだった」っていう話をしてもらうっていう10時間をここでやったんですよ。

 

 

—— 10時間!

シブヤ 延々テレクラキャノンボールを観て(笑)。そこで区切りついたなってなったし、そこでこれやるから買ってくださいって言えたし、買ってくれて10時間同じように観てくれたかたもたくさんいたんで、良かったって思いましたよね。

—— 二度は作れないですもんね、あれ。

シブヤ いやいや、二度は無理ですよね。あれは奇跡の1本だったなって思います。10時間を観るとますます思いますけどカンパニー松尾の才能に惚れ込んだ私間違ってないって思いましたね。あの10時間、もっと言えば14テラを10時間にして、それを2時間に凝縮して全てにちゃんと魅力があるっていうのは本当に凄い作家だなと思いました。

—— 凄い作品を生んだけど(笑)。

シブヤ 生みっぱなしにしてたんですよね(笑)。それは本当によろしくなかったていう(笑)。

 

》》》後編へつづく

 

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