2018-02-04

抒情詩” ゲスママ ” を斜め読み ”起”


アダルトを扱う女性作家というカテゴリーは、私はあまり得意ではなかった。
自虐的な記事を書くか、開き直った記事を書くかのどちらかしか居ないように感じていたから。
彼女との出会いは、とあるAV現場の台本だった。「脚本:神田つばき」
その内容は明瞭に整理整頓され、美しい言葉たちで彩られていた。
興味を持った私は「神田つばき」を検索した。
本文内にも出てくるが、彼女のカミングアウトはフィクションではなく、壮絶なノンフィクションだった。
女が、守るべきものを捨て、本能のままに生き、願ったものを手に入れていくー
言葉で書けば簡単にも思えるかもしれないこの脅威の行動を、彼女は自分の身を投じて体現した。
これから彼女が開拓し、更地にしてくれた道を辿る女性も多いと思う。
今回のシリーズはどうか、自分のことに置き換えて読んでいただきたいと思う。

 


 

—— よろしくお願いします。まずは『ゲスママ』を拝見させて頂きました。

神田 ありがとうございます。

—— 宮台(真司)先生の帯が凄いじゃないですか、”叙事詩だ”っていう。

神田 あんな風に言ってもらって…。宮台先生のリップサービスなのは分かってるんだけど、でもひとかたまりとして、「詩」として読んでくださったっていうのが嬉しかったです。

—— 美しいですよね、表現の仕方が。

神田 ちょっとね、やりすぎたかも知れません。最初は子育て本の予定で、エロい仕事をしてても子どもは育てられるのよ〜、キャピキャピっていう本を書く予定だったんですよ。でもそれが嫌で…、本当の事しか書きたくないと思って書いたらああいう本になってしまって。子育てのエピソードも書いてたんですけど、そうすると話の視点がブレちゃって読んでる人が混乱しそうだなと思って、だったら子育ての事は後回しにて今回は「性」のこと、自分がどうして「変態」と呼ばれるような希望をもつようになったのかに絞ろうと思って書いたんですよ。なので読んでいただけて良かったです。感謝しています。

 

 

—— だいぶ集約した感じは凄く受けたんですけど、多分本当はこれ上下巻ぐらいのハードカバーになれたんじゃないのかなって思いました、一つひとつはもっと深かったんじゃないかとか細かったんだろうし。

神田 細かい部分もあるし逆に猥雑な部分もあって、出会い系で遊ぶ所が結構あったと思うんですけど、あそこの日記って十年分ぐらいあってもっと気持ち悪いプレイをした膨大な記録があって、それこそアナルの話とか…全部書きたかったけど諦めました。

—— 全体的に美しい感が出ているので「テレクラが〜」とか「出会い系が〜」って書いててもなんとなくドロドロしたような感じには受け取らなかったんですよね、凄い表現の仕方だなって思って。

神田 ちょっとそこは美文にしすぎたなっていうのはあって、でももうあれ以外にバランスの取りようがなくて。一生に一回だけ、自分が子どもの時から悩んでいた変態性を持つに至った記録をどっかに書いておかないと嫌だなーって。エロ本とか投稿誌に20年ぐらいは文章を書いてるんですけど、やっぱり男性が消費しやすい形に成型してるから凄く削ってる部分があるでしょ、その削った部分を書きたかったっていうのがありますね。

—— 分かります。

神田 遥さんも凄く分かると思うんですよ、お仕事柄。男性のファンタジーと自分のリアリティの間って凄く通い合うんだけど、距離がないかっていったらやっぱりあって。

—— どうしようもない溝みたいなのものはありますよね、相容れない部分というか。

 

 

神田 男性は夢を見たいし、なおかつ性の産業の中で夢を見る事でお金が回るような仕組みがあるから、社会が許してくれてるんですよね、でもそれがセクシュアリティの全てじゃないですよね。

—— 時代とともに色々とそういうのも変わってきたと思いますし、私も詳しく掘り下げてはいないんですけど風俗って平安時代からあるんですよね。

神田 平安!?

—— そうそう。歴史とともにいつも風俗って一緒に歩いてきたてらいがあって、そういうのを読み解いていくと凄く面白いんですよね。

神田 凄いなぁ、平安とは思わなかった。

—— 一番盛んだったのは江戸時代だったと思うんですけど、そこに至るまでとかその時の国民性っていうのが風俗に反映されててそれって21世紀の今になってもまったく変わってないんですよね、そこが。

神田 平安時代って貴族がお客さんだったんですか? 庶民も?

—— いわゆる、風俗って言われている女性というよりは小姓と呼ばれているような人もいましたし、そういう子たちが相手をしてそれに対しての報酬をもらうっていうのが風俗の始まりですよね。

神田 なるほどねー、そう思うと身分差みたいなものが出来る所には必ず風俗って出現するんですかね。

—— ありますよね、きっと。でも読み解いていくと一番入り乱れてるのは平安時代だなって思いますね(笑)。自分の母親とそういう関係を持てたりとか兄嫁とか、上司の奥さんとヤッちゃったりとか。

神田 そこから文学が出来たわけですしね、凄い事ですよね。

—— めちゃくちゃですよね(笑)。

神田 綺麗事だけじゃ絶対に文学は成り立たないから。

 

 

—— そういうのを見てると本当に面白いなと思いますけど、それも時代と一緒に動いてきたものっていうのを凄く思うんですよね。今回の対談を四部にして「起承転結」という形でやらせて頂きます。神田さんの『ゲスママ』の話も色々とお聞きしたいんですが、斜め読みをさせていただきまして…(笑)。

神田 いえいえ、色んな本読まなきゃいけないですもんね。

—— いやいや、全然読んでない方ですよ。

神田 さっきお話して本好きな人なんだろうなと思ったらやっぱり当たったと思って。

—— 本当に読んでない方でつまみ食いみたいにしか読まないんですよ。前回koolong監督とお話しててあらすじだけを読んだら感想文が書けるっていうのが私と一緒だ! と思って。

神田 えっ、凄い!

—— 私が神田さんと文章的にお会いしたのは、ベイビーエンターテイメントの『女体拷問研究所』(※リンク先R18)の脚本で「脚本:神田つばき」っていうので「あれ?」と思って、でkoolong監督に「今回脚本書いてもらったんですか?」って訊いたら「そうそう!」って話をしてて読ませて頂いた時にあのドロドロした女体拷問研究所が凄いスッキリになってて! 「あ、分かりやすい!」って言ってて(笑)。

神田 (笑)。あれは監督の作品を、商品として成形しないといけないから。私は何を頼まれてるのかなと思ったら、要するにkoolongさんがぐちゃぐちゃした脳内宇宙をまんま台本の中にグチャって入れてくる。

—— そうなんですよ。

神田 それをどう撮るか整理する役目だったんですね。なのでなるべく簡潔にAとBに分けて、白は白、黒は黒に分けるっていう作業が多いんです。

—— 凄いファイリングされた気分でした。

神田 それしか出来ないです。

—— 凄く分かりやすくてスッキリしてて。だからつばきさん自身も頭の中が本棚のように整理されてるんだろうなって思ったんですよ。

神田 それで友達とかもよく失うんですけど、整理好きなんです、整理整頓好き。で家も小さい時狭い家でモノがいっぱいあったから、広い所にモノを置かずに暮らしたいんですよ。だから何でも捨てちゃうので家族も凄い傷ついたんですって。子どもは逆に汚部屋じゃないと心が痛いんだって言って、家出しちゃった事もあったんですよ。長女は高校出たぐらいの時に家に戻ってこなくなりましたね。

—— 本当の理由はそれなんだ(笑)。

神田 そうなんです、で家族の多い家に転がり込むんですよ、三世代7人家族みたいな所に転がり込んで、使ったものを片付けなくて皆がそれでも怒らないで仲良く暮らしている家が好きって言ってました。

—— 反面教師的な感じなんですか?

神田 そう。だから仕事をするにおいては原稿を短くしろって言われるのが大好き。

—— 要約してって言われるのが好きなんですね。

神田 大好きです。

 

 

—— でもそれが私の中では戦慄を覚えるぐらいで「すっごい!」って思って。頭の中が男らしいというか簡潔にできてる人なんだろうなって勝手に想像を膨らませてて(笑)。私、本でも映画でもなんでもそうなんですけど、まずそれを作っている人、作り手の性格とかを想像して楽しんでしまう方なんですけど。

神田 それ楽しいですよね。処方箋みたいな台本っていうのが私の理想なんですよ。処方箋みたいに書けば監督がそこでムードを入れてくれるんでなるべく処方箋にしたいんですけど、時々なんか頭がカーっとして自分の好きなように書いちゃう時があって、そういう時に「ちょっとこれは違うね」って言われる事があって、やっぱり男性が読むものなのに女性目線で男役の方のバックボーンを書きすぎちゃったりして、「これ逆にできないですかね?」って、女の人の方のバックボーンを書いて欲しいって言われて「あ、やっちゃった!」って事はあります。

—— でもやろうと思ったらドロドロにも作れるって事ですよね。

神田 ドロドロしますね、でもあんまり良くないですね、自分でドロドロを作るのは。

—— 自分で書いてても「あー!」ってなっちゃうんですか?

神田 なりますね、なんか気持ち悪くなっちゃって。

—— 『ゲスママ』を読んでいてところどころにそういう感情にシンクロする所があったんですけど「あ、きっとここ書いてる時落ちただろうな」って所もあったりして(笑)。

神田 分かりました? バレますねそれは(笑)。

—— あー凄く落ちてしばらくは身動きできないような状態になってるんだろうなってところがあったりとか。

神田 あります、ありましたね…。

—— 勝手に過去をリバイバルしてるって感じがありますよね。

神田 もう白目剥いて一時間ぐらい動けない時がありました。

—— 一時間で復帰するって凄い。

神田 復帰しないと…出向先の会社で書いてたんで(笑)。チャイムが鳴ったら一応回復するっていう(笑)。

—— そこは家でダラダラやってたわけじゃないっていう。

神田 家だと書けないんです。元々怠け者なんじゃないですかね、逃避したくなりますね。

—— 現実逃避の素材を周りに置かないって事ですか?

神田 結局一日なんにもしないでただパソコンの前にいて終わっちゃうんで…、パジャマを着たまま映画をかけながらその映画を観るわけでもなく、パソコンの前でなぜかお昼前からお酒を飲んでしまって、気がつくと夜8時になってたりして。

—— それ一昨日の私です(笑)。

神田 本当に?

—— そうです、一昨日の私です。

神田 良かった、私だけじゃなかったんだ。なんなんでしょう、あれ。

—— ヒドいもんですよ(笑)。一昨日も途中で楽しいことを考えついたら興奮して寝付けなくなってしまって、寝なきゃって思ってワインのハーフボトルを空けてそうしたらいつの間にかソファで寝ちゃって、朝8時半ぐらいに起きてどうしようかなって思ったんだけど、まだワインが残ってたんでもうちょっと飲んじゃえって。

神田 そこで8時半に起きてそこから頑張ってやれば捗るのに、なぜかワインの方にいっちゃうんですよね。

—— 結局パジャマのままで顔も洗わず映画とかネットとかを流しっぱなしにしながらパソコンの前にいてハッと我に返ったら夜で「真っ暗!」って。

神田 ああいう時って暗くなるの早くなりますよね、なんでなんだろ…?

—— 時間がそこだけ抜けてる感じがありますよね、そこだけ。

神田 私はまったく同じ日に「あゝ、荒野」っていう去年の映画を観ちゃったら、あれって5時間ぐらいあるんですよね。Facebookで知ってる方が脚本を書いてたんで勉強にと思って観たら5時間あって。結構感動するけど観終わった後にヘコむ…、遠藤周作を読んだ後みたいな「人間ってダメなんだな〜」って。

—— 私、遠藤周作こそ、イヤミスの元祖だと思ってて。

神田 ですよね、あの人のバッドエンドな感じって凄いですよね。逃れられない。

—— イヤミスってここから始まってるのかもしれないっていう。

神田 そうかも、そうですよね。あ、すみません私脱線しまくってますよね。

—— いえいえ。

神田 なんの話してたんでしたっけ…?

 

 

—— 家だと現実逃避してしまうから、時間と場所を決めて仕事をするっていう。

神田 そうです。

—— やっぱり男性的っぽいですよね。

神田 本当ですね、やっぱり。私は本当に男。

 

—— 起承転結の「起」の部分なんですけど、今回は男の心と体を解剖するっていうのをやってみたいなと思ってるんですけど、ゲスママの冒頭から医学的な話をしだしたので「おお!」と思ってキランとしたんですけど。

神田 どんな事書いてましたっけ…?

—— 女性は胎内にいる時から700万もの原始卵胞を常に所有していて実は生まれる前のほうが純正な女であったと。

神田 そうそう。

—— とても興味深くて。

神田 子どもを生んでないから母じゃないなんて事は無いんですよ。

—— 元々そこが純正の女であったという事ですね、それが生まれてどんどん減っていったって事ですよね。でもDNAも体の原型も性別は女性なんですよね。

神田 そうなんですよね、書いてましたよね、男は女の出来損ないって。

—— それは本当に遺伝子学者の方々が言ってますよね。

神田 良いことだわ…。

—— 私は自分が男性の体に携わってる関係上、出来損ないっていうのは…っていうのがあってどちらかというと女性の亜種っていうのが近いと思っていて。

神田 亜人ですよね。

—— そうそう、体の中にも使わないで死んでいくものが男性の中にあるんですよね、使わないまま。その中の一つが男性の子宮だったり、前立腺とかでもこういう使い方をしたらもっと違うとか、一番興味深かったのは蟻の門渡りの所のこの縫い目ってなんなんだろうってずっと思ってて。

神田 縫いぐるみみたいなあれですよね、ちょっと隆起してる。

—— 人体に最初に興味を持ったのがあれなんですよ、お仕事で男性の体をまじまじと見るじゃないですか、ずっとなんだろうって思ってて。「アソコの縫い目ってなんだと思う?」って色んな人に訊いても「さぁ?」って。そもそも「縫い目って何?」って知らない人もいるぐらいで。

神田 私もどういう経緯でああなったのかは知らない。

—— あれ小陰唇なんですよね。

神田 え!

—— あれが開いたら小陰唇なんですよ。

神田 恥ずかしい〜、そうなんだ!

—— あそこってなぞると皆気持ちいいって言うじゃないですか。小陰唇なら気持ちいいよねって思ったんですよ。

神田 言いますよね、あ、だから逆に我々も最初、舐めてって言われないのにちょっとここ舐めてみよう、とかなぞってみようって思いますよね。自分にあるものを男の体に見いだして触りたかったのかな? そしたら「あふん」ってオジサマが言ったんで、気持ちいいの?ってビックリしたんだけどそういうことだったんだ…。

—— そうなんです、小陰唇だって思うと勝手知ったるものじゃないですか。どうやって触れば気持ちいいとかが分かってるのでその通りにやると本当に反応するんですよね。「なんて男の体は面白い!」って思ったんですよ。

神田 そうだったんだー。あそこを舌で尖らせてチロチロやったらオジサマが「うふふっ」って言ってて。

—— あそこが開いた状態が女性ですよね。その縫い目が開かないまま生まれてきちゃったのが男性なので。

神田 そっかぁ、そこは開けまんキッキなんだ(笑)。

—— (笑)。それが凄い面白いって思い出したのが最初でしたね。

神田 じゃあ男と女の体って相互に進化し合うっていうか分岐しあってて、どっちが上とか下じゃないっていうお考え?

—— お互いにどっちも持っているんだと思うんですけど、女性だってGスポットって呼ばれてるものは何なんだろうってずっと思ってたらあれって前立腺なんですよね。

神田 そう、でクリトリスはチンコ(亀頭)でしょ? 私、仮性包茎なんです…(笑)。

—— あはは、でも皆仮性包茎だって言いますよね。

神田 えーでも私あれですよ、AVでイジメ役の方が全然多くて、女医役を何十本もしてて色んな女性のオマンコを見せてもらったんですけど、やっぱりズル剥けの方は感じやすくて羨ましかったです。生まれつき剥けてる人は大きいですよね、クリトリスが。凄い気持ちよくて痛がらないで羨ましかったんです。

—— やっぱりモリマンって名器ですよね。

神田 今から凄く悲しい話をするんですけど、私、モリマンだったんですよ、土手高だったんです。だけど更年期の終わり、ちょうど閉経って呼ばれるようになる50歳ぐらいから土手が消失してきました…。

—— そこは次の「承」でお聞きしたいです。笑。

 

 

—— なので男の体に戻って、つばきさんも色んな男性と主に離婚されてから携わってると思うんですけど、自分にとって男性ってどんな対象だったか、それを年齢別にお伺いしたいんです。

神田 それは肉体面、精神面両方?

—— 自分が感じ取った男性ですね。

神田 やっぱり10代から20代の時は、自分を圧倒して凌駕してリードしてくれるゼウスのような存在を求めてたんです。で、最初は賢い人がいいって思って大学院を出てる人に処女を捧げたんですけど、大したセックスじゃなかったんです。「なんだ、ゼウスじゃないじゃん」って思って、次は身体性の方でいこうと力士と付き合ったんですけどそれも違って、最後にほどほどのヤンチャっ気があって不良性があるのに本をいっぱい読んでる夫と結婚したっていう。常にゼウス性を求めていて、でも誰も全然そうじゃなかった。むしろ自分をゼウスに見せてる内面は弱い男たちに失望したのが20代ですよね。で30代の半ばくらいから、離婚して外に目を向けて、ゲスママにも書いたように男って欲望のエネルギーでグルグル回ってるメリーゴーランドのお馬みたいな存在なんだって思って、私もその流れの中に飛び込んで彼らに自由に乗ったり降りたりしていいんだっていう…風俗のチェンジってあるじゃないですか、あんな感覚。自分の体を満たしてくれる相手を次々に取り換えて、より自分に合う人に巡り会いたい。

—— お洋服みたいな感じですね、より似合うものを探していく。

神田 本当にそうで、最初は高くて綺麗な服を着たんだけど自分に似合うのは違うわって思って、色んな男の肉体を洋服のようにまとってみたら、合う、合わないっがわかってきて。そこで自分自身をも発見していくっていうのが30代ですよね。で、女盛りっていうのは40代なんですよね。弱ってくる自分の肉体と反比例して強くなっていく欲望があって、「これが最後のセックスなんじゃないか」って感じで。毎回試合みたいな、毎回が巌流島(笑)。

—— 決死の(笑)。

神田 とても贅沢になっていって、40代は。30代の頃はヤラなくてもいい相手ともヤッてたような気がするんです。それが40代になったら、自分と同じぐらいの気迫を持って性に挑んでる男を探さなきゃって思って、だんだん見た目とかじゃなくて性に向き合ってギリギリ生きている人って思ったら、ちょっと心がダメになってる人とか暴力的な人だったり、ヤバい所にどんどんいきましたね。で、最後の最後に自分の肉体を切除するような事までいっちゃった。そこで相手が私の切断した肉体を食べてくれれば相手の勝ちだと思って、一生付いていく覚悟だったんですけど、「僕は食べない…」って言われた時に「この試合は自分の勝ちや、でもなんて孤独なんだ宮本武蔵は…」って思って、それが40代の終わりですね(笑)。で50代になってだんだん悟りを開いてきたというか、男も人間なんだって分かってきて、彼らの事をそれまで体でしか見てなかったんですけど、彼らも傷つく心とか飢えとか寒さとか色んなものに耐えてるんだって分かって、愛所愛情を持って接しないといけないんだなって思い、ハードSMを止め普通のセックスをするようになりましたね。50の時から8年間同じ人と付き合いました。ブログを読んでいたファンの方だったんですけど、なんかもう欲望が無くなってきました。

—— 肉としての欲ですか。

 

 

神田 そう、無くなっちゃって。親しみしか無くなってきちゃって、この人とは親しんできたしこれからも親しんでいこうってなって、肉欲が消えてもうカラッカラ。何にも濡れなくなって陰毛も薄くなってきて、そうなった時に「ああ、これでやっと出家できる」って思ったんですよ。どこかの尼寺に入って、最終的に山の廃寺かなんかで執筆しながら性の悩みを聞く尼さんになろうと思ったのが去年だったんですけど、たまたま20年前、離婚直前の別居時代に出会い系で会った男性…子宮があった時に最後にセックスした人になぜか会っちゃったんですよ。誘われたんですけど、「私もうセックスできないんだよね」って言って、でも一年経ってあの人なんであの時誘ってくれたんだろう、そういえばあの人私の子宮を見送った最後の人だなーって思って。じゃあ乳首が無くなった自分をこの男に目撃させたいと思って、ゲスママを読んでって言ったんです。そしたら彼はそれを読んでも怯えなかったんだよね。「どう思った?」って訊いたら「相変わらず一生懸命前向きにやってるんだなって思った」みたいな事を言ってたんで、ヤッちゃったんですよ彼と。そしたら酷くて、何にも前戯もしてくれなくて。

—— え?

神田 ひどかったんです、暴力的で。体重をかけてのしかかられて「もう死んじゃうから止めて、圧死する!」って言ってたらめちゃくちゃに濡れてたんですよ、自分。「本当にケガするから挿れないで!」って言ったのにズルって挿何の苦もなく入って、その瞬間に自分の持ってる獣性、アニマリズムに自分が裏切られた事を知りました。「出家したいとか言ってた自分の精神は、ケダモノの自分に裏切られたな」と思って愕然としたっていうのがつい2ヶ月前の事で今日に至るっていう(笑)。

—— 本当は瀬戸内寂聴コースにいこうと思ってたのに(笑)。

神田 寂聴にはなれず…、寂聴先生みたいなライフスタイルになれば糊口をしのげると思ったんですよ、皆相談しに来てくれると思って、私はずいぶん極めたけど今はこんなに平和なのですって言おうと思ってたんですけど、できなかった。

—— まだまだケモノが(笑)。

神田 ケモノが…はい(笑)。

—— それは元々持ってたものだと思います? それともそういう風に自分の体がなっていった結果?

神田 元々持っていたものだと思いますね。性に関して原稿を書くような事をするようになってから困ったことの一つが、基本的に「こんなセックスをして楽しかった、楽しい楽しい」っていう原稿を求められることです。現実には楽しいだけじゃない、もっとドロドロしたものが自分の中にあって、お前はもっとヤッてグチャグチャになるべきだって命令してくる。それは多分生まれた時から自分の場合はあったんだろうなって。親が厳しくしすぎたってゲスママに書きましたけど、親も心配だったんじゃないですかね「この子ちょっと…」っていうのはあったのかも。

—— 結構あからさまだったんだなって思いました。

神田 それはどの部分?

—— 私の場合は今でも両親が私がこういう仕事をしてるって知らないし。

神田 知らなくていいですよね。

—— 母も父も全く何も知らないでいるので、でも知らなくていい事だと思ってるんで多分知ったら憤慨すると思ってるので(笑)。

神田 そうですね。

—— だからあからさまにオープンにしているんだなって思いました。

神田 離婚までは全然何も言えなくて、本当に性のことに限らずで、夫婦仲が良くないって言うのも母が心配するなと思って言えなかったんですよね。反抗期すら無かったんですけど、離婚した途端に復讐するみたいに親に全部言いたくなっちゃって。ちょっとひどかったな、そんなにあからさまにする事無かったなって今は思ってます。

 

 

—— ゼウスじゃなかったって分かった時に、つばきさんにとっての男ってこういう生き物だよねっていう一つの結論に至りました?

神田 うんうん。結論って思うのは最近なんですけど…、二つ言わなきゃいけない事があって、一つは男の人ってやっぱり性の消費者である事に慣れちゃってるから、8年間付き合った彼氏でさえ、私の事を性の喜びを提供してくれる気前のいいお姉さんみたいに思ってることに違和感がありますね。「東京女子エロ画祭」っていうアートコンペを7年間やってるんですけど、女性がこれがエロいと思うって出したものに対して、自分が消費できないって分かるとがっかりする男性は少なくないです。なんで俺たちのペニスを無視するんだ、みたいな傷ついた顔をするので、この人達は消費側にいるんだなって思います。だから消費じゃなくて、私と一緒に共犯者になって私の肉体を壊そうとしてくれる人がいい、そういう男性が好きですね。

—— でも構造としては男性って凄くシンプルだと思いませんか?

神田 そう、単純ですよね。そうそう、構造で一つ羨ましい事があって、仲の良い俳優さんが60代後半で父親になったんです。男の構造って逞しいなって、精子がちゃんと生きてるんだ、子ども出来るんだなって、そこはちょっと羨ましかったですね。私がいくら体外受精してって言ってももう卵子がない。

—— 精子は死ぬまであるって事なんですかね。

神田 卵胞細胞の数は、私たちが母親の胎内にいたときに決まっていて、使い尽くしたら終わりです。でも、男の精子はずっと使っては生産され、使っては生産され…男の構造も羨ましいところがあるなって最近思い直しました。

—— 私はエクスタシーに携わっていく仕事なんですけど、やっぱり男性って凄くシンプルにできてるなって思ったのが相手がどんな人であろうとも自分を気持ちよくしてくれる人に対して男って体を開くんだなっていうのが私のイメージなんですよ。本当に口先だけの甘い言葉でもこんなに簡単に心開くんだなって思ってて、逆に哀れって言ったら失礼なんですけどかわいそうになってきちゃうんですよ、こんなにも簡単過ぎて。

神田 確かに。しかもその簡単さが少年の時から老年になるまで全然変わらないので唖然としちゃいますね。

—— ちょっと気の毒になってきたりして「悪い人に騙されちゃダメだよ!」って言いたくなるぐらい(笑)。

神田 騙せるかなぁ…。

—— 人体の構造とか生理学が分かるようになると男の体って簡単に騙せますよ。

神田 そうですよね、昔遊びまくってた時にちょっと仲良くなった男の子に何回射精出来るか試してみようって言った時があって。自分にそんなにテクニックは無いので前と後ろで交互にヤッたんですよ、そしたら前で射精してそれから後ろでヤルとまた射精しちゃうのね、結局7回ぐらいヤッて途中の合間の所でも出ちゃうの、点々と床にお漏らしして、最後は「ウッ…」って呻いてるんだけど出るものが無いっていう…。

—— カライキ?

神田 そう、で「喉乾いた。喉乾いた」って泣いてて。でシャワーを浴びさせたら「良かったーシャワー浴びてなかったら僕永遠に射精してたかもしれない」って言ってて、その時に今おっしゃってた男の単純さみたいなものに圧倒されちゃって。

—— こんなに簡単に出来ちゃうようになってるんだ! って。潮を何度も吹かせるじゃないですか、やろうと思えば1リットルぐらいは吹かせられるんだけど「もう出ない!」って思っててもお水を500ミリリットルくらい飲ませるとまた出るんですよ。

神田 そんなに出るの!?

—— 「簡単!」って思って(笑)。

神田 でも男の人の方が飲んで出す経路が短そうっていうか簡単、シンプルそうですよね。

—— シンプルです、早いんです。だから逆に言うと私は簡単すぎるって思ったところから私に変な母性が生まれて「これは守っていかなきゃいけない!」思っちゃったんです。

神田 遥さんの過去のインタビューを読んでて、凄い母性的って思った。

—— いえいえ、後で出ますけど母性っていうのは私は男性性だと思ってるので。

神田 あーそうなのね。

 

 

—— 私は逆に風俗をやってどんどん自分の男性性が開眼してきてしまったんで、私もずっとゼウスだって思ってたのがある機会を期に絶望まで、奈落の底まで落とされたんですけど、そこから上がってくる時に「じゃあ私がゼウスになればいい!」って思っちゃったんですよ。

神田 思ったんだね…。

—— そう思わないと這い上がってこれなかったと思ってるんですけど。

神田 そう思った時、自分も幸せな気持ちになりました?

—— どうだったかなぁ…、ある種力任せって感じですよね(笑)。

神田 自立する自信が無い為に依存しないと生きていけない気がして、自分はMだって言い張ってる女性も少なくないです。だからゼウス性が持てるっていうのは凄く自由でいいなあ…。

—— 次はそこに行きます。

 

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今回のゲスト:作家 神田つばきさん

 

 

1959年東京生まれ。「この先、危険!」の誘惑に勝てないアゲマン体質の蟹座。
女性発信のイベント、映像作品をプロモートする作家。

専業主婦からアダルトライターへ華麗なる転身を遂げ、
著作「ゲスママ」は多方面へ影響を与えた。
子宮ガンから子宮摘出、フリーセックス、閉経までを赤裸々に美しい文章で描かれ、
いまも性に悩む女性たちのバイブルとなっている。
自身の主催である「東京エロ画祭」では多職種の女性がエロを様々な形で表現している。
その他、「私の妄想、かなえてください・・・。」などの著作も。

神田つばきTwitter

東京女子エロ画祭

神田つばきブログ

 

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